学園だより

学園歳時記【かんなづき第4号】〜茶道科研修旅行〔後篇〕

平成24年10月13日(土)

―前篇からの続き(前篇はこちらをご覧ください)―

茶筅工房をあとにし、昼食をはさんで生駒から奈良市へ移動。次の目的地は赤膚焼(奈良市赤膚町)です。安土桃山時代の天正年間に開窯されたとされる赤膚焼。絵因果経をモチーフにした「奈良絵」は赤膚焼独自の意匠、古くから茶人のあいだで親しまれてきました。今回訪れたのは赤膚焼元窯、古瀬堯三氏の窯です。江戸時代後期から昭和にかけて造られた大・中・小の3基の窯のうち、大と中の二基は国の登録有形文化財に指定されています。登り窯につづく小高い丘へ導かれ頂上へのぼり、奈良の街並みを一望。澄んだ空のもと景色に見とれていると、「皆さんが立っている丘の足元の土が実は陶土になります」と教わり、学生たちは驚きの声を上げました。
最後に訪れたのは真言律宗総本山・西大寺(奈良市西大寺芝町)です。西大寺の創建は奈良時代(764年)にまで遡ります。百年以上をかけて造営された当初、広大な敷地と荘厳な大伽藍は、東の東大寺にならび称されるほどの規模を誇っていたそうです。平安時代には度重なる災害のため衰退しましたが、鎌倉時代の半ば、叡尊(えいそん)上人によって伽藍が整備され、復興しました。西大寺といえば大茶盛式が有名です。延応元年(1239)初め、正月の法要を無事に終えた叡尊上人は近くの八幡宮に献じたお茶の残りを民衆にふるまいました。これが大茶盛式の由来とされています。
「お点前頂戴いたします」。すっぽりと顔が覆われるほどの大きな茶碗を両手で抱え、ひとりずつ薄茶一服を喫します。茶碗を持ち上げることができず、両脇から支えてもらう学生もいました。茶碗をはじめ総ての道具が特大サイズ。点前も悠然たるものでした。茶席にてご亭主をつとめられた茶頭より「お茶の心得のある若い人達がこんなにたくさんいることを嬉しく思います。これからも稽古に日々精進してください」と激励のことばをいただきました。

万葉のふるさと、奈良。穏やかな秋風が少し冷たく感じられます。帰りの車窓から眺めた先には、のどかな田園風景が広がり、透き通るような青空に鰯雲が浮かんでいました。

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