学園だより

学園歳時記【かんなづき第2号】〜古典に浸る観月茶会

平成25年10月18日(金)
台風26号が通りすぎ、また一段と秋が深まったようです。 朝夕の空気がひんやりと感じられます。 陰暦「十三夜」の翌日にあたる10月18日(金)、 茶道科2年生(51期)が席主となり観月茶会が催されました。 2年生にとって初めてとなる懸釜は濃茶席でした。
ほの暗い待合の床には竹が凛とならび、そのうちの一本がほんのり光っています。 どうやら『竹取物語』が主題のようです。菓子は手作りの粟ぜんざい。おぼろ月を思わせます。 粟のつぶし加減や餅米の量を変えて試作を繰り返し、絶妙な食感に仕上がりました。 馬の鞍形の煙草盆と赤楽の火入を鑑賞していると濃茶席へ促す声がかかりました。
本席の床は立花大亀老師筆の 『風吹不動天辺月』。何事にも動じることなく「初陣」に臨みたいという気持ちの表れでしょうか。 市松模様の耳付籠には秋の七草。個性のちがう草花が寄り添うさまは51期生の姿に重なります。 香合は月日貝香合。書院にはイチジクの枝と実が飾られ、何かの謎かけのようです。 点前座は真塗の長板。蒲池窯の土風炉に雲龍釜、水指は独楽模様。藤田ちひろさんがかぐや姫役として点前を担当。 華やかな「片流し文庫」結びの帯は景山蛍さんが着付けしました。月見にふさわしく茶入は広沢手。 主茶碗は黒楽「鉢開」の写しです。替えの茶碗には2年生が手捏ねした楽茶碗が用いられました。 茶杓の銘は、初冬の訪れを告げる『淡雪』。竹取物語のクライマックスで描かれる「不死の山」の万年雪を連想させます。
待合の赤楽火入をはじめ、貝香合とイチジク、点前座の雲龍釜と鉢開。 実はそれぞれが「火鼠の裘(かわごろも)」「燕の子安貝」「蓬莱の玉の枝」 「龍の首の珠」「仏の御石の鉢」に重ねられたアイテムでした。 物語のなかで5人の貴公子からの求婚を拒むために、かぐや姫が示した5つの無理難題です。 席が終わると、帰りの順路として次の間を案内されました。床には富士の画賛が掛けられ、かぐや姫に託された手紙と壺が置かれていました。 どこからともなく沈香の香りが漂い、不死の山から立ちのぼる煙りが見えるようでした。
日本最古の物語とされる「かぐや姫」の伝説をテーマに、物静かながら雄弁な取り合わせ。 女性ばかりの51期生らしく物語文学を存分に堪能させる、しとやかな席となりました。

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