学園だより

学園歳時記【ふづき第1号】〜鵲に願いを託して

平成26年07月08日(火)

鵲(かささぎ)の託せる願い届け給え 五色のそらに溶かし尽くして 〜詠み人しらず

7月になり雨の日が増え、京都らしい蒸し暑さが続いています。梅雨の中休みとなった8日(火)の午後、茶道科2年生と1年コースが席主をつとめ七夕茶会が催されました。 今回のテーマは「調和」。天の川と同じく裏千家学園もさまざまな星が集う場所。皆が一つになって銀河をなし学園のハーモニーを生み出そうというものです。

床は無学宗衍禅師筆の「乾坤同永久(けんこんえいきゅうにおなじ)」。万物の融合、人と人との調和を表していると席主は読み解きました。 つぼつぼ籠の花入に涼しげな李白鉄線とナルコユリ。香合は山中塗りの琵琶。床脇の笹飾りが七夕の雰囲気を盛りあげます。 菓子は葛製、銘は「九天」。色とりどりのイラ粉を散りばめ天の川を表現。菓子器に盛られた小さな銀河に席中から歓声が沸きあがりました。 茶杓には水車の蒔絵が施され、棗はアクリル製の倶利棗。主茶碗は白磁の平茶碗。清涼感あふれる点前座に織姫が華やかさを添えました。

琴のしらべに誘われ点心席へ。向附は小鯛の笹漬けと茗荷和え。桶の氷で冷やした佐渡の純米酒が備前の徳利で振る舞われました。 煮物椀は冷たく澄んだ「天の川銀河そうめん」。短冊形の人参と結い三葉は願いを象徴しています。八寸には鱧の梅肉がけとオクラが出されました。 点心席の床に据えられた大きな水盤はたっぷりと水を湛え、広大な宇宙を思わせます。

七夕の物語では年に一度、牽牛と織姫を会わせるため、鵲が天の川に翼の橋を架けてくれます。 これに着想を得た席主は、茶会の開催にあたり、鵲をかたどった紙片を招待状に添えて客に配りました。 客はそれぞれ願い事をしたためて持参。水盤に紙片を浮かべ笹でかき混ぜると、宇宙の彼方へ飛び立つように、すっと溶けてなくなりました。 願いが聞き入れられのでしょうか。

後片付けが済んだ放課後、席主の代表は茶会の仕上げに出かけました。行き先は加茂川と高野川の合流地点。 皆の願いが溶け込んだ水を中洲の妙音弁財天に献じ、心願成就を祈りました。主客一体となって奏でたハーモニーが鴨川のせせらぎに乗り、悠々と流れて行きました。

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