裏千家

学園だよりアーカイブ

ツキ尽くしの茶会

平成26年10月08日(水)

堀川通の並木銀杏が秋の色に染まりはじめています。日暮れが早くなり、澄んだ夜空に月あかりが冴える季節になりました。旧暦の十五夜にあたる10月8日(水)、1年コースが茶道科2年生の協力を得て観月茶会を催しました。

本席の掛物は鵬雲斎大宗匠筆の『秋月照相心』。虫籠花入に夏の名残りの燕尾仙翁。竜胆とエノコログサが深まる秋を演出します。香合は堆漆の菊蟹。ヨーロッパには月面の模様を蟹と捉える国もあるようです。裏紅釉の水指は「赤い月」の見立て。奇しくも、この日の晩に見られるであろう皆既月食を予告しています。茶杓は坐忘斎家元作の『玲朧(れいろう)』。棗は大ぶりの秋野蒔絵。干菓子は半月を模した煎餅と枝豆の州浜。主茶碗は点前を担当した長谷川綾香さんが手づくねしたもの。連客には円相をあしらった数茶碗が運ばれました。

点心席では床の月見団子と芒が観月の気分をいっそう盛り上げます。煮物椀は蓮根餅。とろろ昆布がたなびく雲をあらわし、餅を割ると中から鮮やかな南瓜の月が顔を出しました。締めくくりに畳鰯と胡桃の八寸が福岡の銘酒とともに振る舞われました。
お客様に「ツキ」が訪れるようにと席主は願いをこめ、たくさんの月を取り合わせに盛り込みました。一日が終わり水屋当番が下校する頃、すっかり陽は落ちていました。東山の上に浮かぶ満月が陰りはじめ、妖しい色合いを帯びています。京都で皆既月食が観られるのは三年ぶりのこと。席主の想いが通じたのか、さっそくツキが巡ってきたようです。